材料選択でいつも頭を悩ましている方へ。甚さんが、設計で使える職人アイテム「材料特性データ」を公開!
根川 甚八(ねがわ じんぱち)
根川製作所 代表取締役社長。団塊世代の大田区系オヤジ技術屋。通称、甚さん
国木田良太(くにきだ りょうた)
ADO製作所 PC事業部 設計2課 勤務。80年代生のイマドキな若者。機構設計者。通称、良君
編集部注* 本記事はフィクションです。実在の人物団体などとは一切関係ありません。
設計という職業は、なんとなく高尚で難しいと考えられているようです。筆者は、度々、設計と設計者を料理と料理人に例えますが、設計とは料理と全く同じ、もしくは、料理よりもやさしい(?)と考えています。
さて、皆さんは材料の選択に悩んだことはありませんか? 料理人は毎日、悩んでいるといいます。皆さんも料理人同様の「職人」ならば、「悩んだことはありませんか?」ではなく、毎日、悩んでいるはずです。
もし、悩んでいないとしたら、その理由は、「諦め」と「情報不足」です。
筆者は、設計コンサルタントとして生計を立てていますが、時々、クライアント企業から設計審査を委託されます。ある日の設計審査で天地が逆転しそうな事件に出会いました。
早速、そのやりとりを甚さんたちに再現してもらいましょう。
良君! そのおもちゃの電車のシャーシなんだけどよぉ、なんで材料をPC(ポリカーボネート)にしたの? ちょいと教えてくんなぁ?
それは、超カンタンですよ。昔の商品からこれはPCって決まっているから、先輩の図面を見て写し取りました。
昔って、いつだ?
多分……、12、3年前です。
た・ぶ・んーっ!? 12、3年前だとぉ? オメェは、図面も描けねぇ読めねぇ院卒かと思っていたがよぉ、材料まで選択できねぇのか? あんっ!? 学校にそういうカリキュラムはねぇのかよぉ?
えぇ、ありませんよっ! あるもんですか!
「多分」発言にブチ切れる甚さんと、悪びれもせず開き直る良君……。大丈夫でしょうか。
テンメェ! この野郎、学校のせいにしやがって。悪いことは言わねぇがよぉ、大工や料理人だっだらよぉ、切腹もんだぜぃ! 日本の技術者ってのはよぉ、「職人」じゃねぇのかい? あん?
本当に、技術者とは「職人」なのでしょう?
ところで、料理本の食材情報はとても豊富で、万人が理解できるよう丁寧に書かれています。「グルタミン酸」や「イノシン酸」の含有率についてウンチクを唱える「食材オタク」でなく、その化学用語でさえ、あえて「うまみ成分」とやさしく書き換えて食材に関する実務情報に徹しています。
この理由は、食品化学者ではなく、料理人という実務経験者の立場で書かれているからです。
従って、料理人に「諦め」や「情報不足」はなく、常に味の研究、常に材料選択に悩むことができるのです。同じ「職人」として、うらやましい限りです。
甚さんの若き頃に、お料理本のような「機械材料本」を切望すれば、いま僕は、立派な「職人」になっていたと思いますよ。
テンメェーッ!! この野郎、学校の責任にした次はオレサマの世代に責任をなすりつけるのか? あん? あーんっ!?
ヒッ! だって、そうですよ。この専門書を見てください。どれもこれも……。
良君は、機械材料に関する書籍や教科書、またはセミナーの内容について、甚さんに訴えました。技術資料は、「JIS規格」「金属組織の顕微鏡写真」「金属組成の含有率表」などの内容でどれもこれも似たり寄ったりです。これらは、機械材料という学問においては極めて重要な知識ですが、設計者の立場からは少々疑問が残ります。
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